音とは何か — 空気のふるえを「見る」
「音」の正体は、空気のごく小さな振動です。波を特徴づける3つのつまみ — 振幅・周波数・位相 — をスライダーで動かし、空気の中を波が伝わる様子まで、すべて目で確かめます。
1. 波の3要素 — 振幅・周波数・位相
マイクで録った音をグラフにすると「波」が現れます。いちばん純粋な波がサイン波。サイン波を決めるつまみは3つしかありません。
- 振幅 A — 波の高さ。大きいほど大きな音。
- 周波数 f — 1秒あたりの繰り返し回数(Hz)。多いほど高い音。
- 位相 φ — 波のスタート位置のずれ。波形が横にスライドする。
サイン波プレイグラウンド — 3つのつまみで波を操る
水色=いまのサイン波。位相を動かすと、灰色のゴースト(φ = 0°の波)から横にずれていくのが分かります。点線は振幅 ±A のガイド、オレンジの目盛りは1周期分の長さです。
y(t) = A sin(2πft + φ)
サイン波はこの3文字(A・f・φ)だけで完全に決まる、いちばん単純な音
POINT — 3つのつまみの「聞こえ方」
振幅を変えると大きさが、周波数を変えると高さが変わる。位相を単独で変えても聞こえ方はほぼ同じ — ただし複数の波が重なると位相が決定的に効いてくる(第3章で体験)。
2. 音の正体 — 空気の「疎密」が伝わる縦波
スピーカーの膜が前後にふるえると、目の前の空気が押されて濃いところ(密)と引かれて薄いところ(疎)ができ、それが次々と隣の空気へ伝わっていきます。これが音の波です。
下のデモで大事なのは、空気の粒そのものは飛んでいかないこと。オレンジの粒に注目してください — その場で左右にふるえるだけで、右へ進んでいくのは「疎密のパターン」だけです。
空気の縦波シミュレーション — 疎密が右へ伝わる
上段=空気の粒(赤みがかった帯が「密」)。下段=各場所の圧力をグラフにしたもの。粒が集まった場所(密)がグラフの山、まばらな場所(疎)が谷にぴったり対応します。周波数を上げると疎密の間隔(波長)が短くなります。
注意 — 波形グラフの上下は「空気の上下」ではない
波形グラフの縦軸は空気の圧力(密度)の変化。音の波は進行方向と同じ向きに振動する縦波であり、ロープの波のような横波ではない。「波形グラフ=圧力変化のグラフ」という対応を押さえよう。
3. 波の重ね合わせ — 強め合いと打ち消し合い
2つの音が同時に鳴ると、空気の圧力変化は単純に足し算されます。このとき2つの波の位相差 Δφ がすべてを決めます。スライダーで Δφ を動かして、和がふくらんだり消えたりする瞬間を見てください。
重ね合わせと干渉 — 位相差で和が変わる
上=波1、中=波2(位相差つき)、下=2つの和。Δφ = 0°(同位相)で振幅2倍に強め合い、Δφ = 180°(逆位相)で完全に打ち消し合って無音になります。
和の振幅 = 2A cos(Δφ / 2)
Δφ = 0° なら 2A(2倍)、Δφ = 180° ならぴったり 0(無音)
一歩先へ — ノイズキャンセリングの正体
ノイズキャンセリングイヤホンは、外の騒音をマイクで拾い、位相を180°反転した波をスピーカーから出している。騒音と逆位相の波が耳の中で足し合わされ、打ち消し合って静かになる — まさに上のデモの Δφ = 180° をリアルタイムでやっている。
4. まとめ — 数字の感覚をつかむ
- 振幅 → 音の大きさ。比を対数で表した単位がデシベル(dB)で、振幅10倍 = +20 dB。ささやき声 約30 dB、ふつうの会話 約60 dB、ライブ会場 約100 dB。
- 周波数 → 音の高さ。単位はHz(ヘルツ)=1秒あたりの振動回数。男性の話し声の基本は約100〜150 Hz、女性は約200〜300 Hz、ピアノは約27.5〜4186 Hz。
- 人間の可聴域は約 20 Hz 〜 20 kHz。上限は年齢とともに下がる(若い人にしか聞こえない「モスキート音」は約17 kHz)。
POINT — 次のレッスンへの伏線
可聴域の上限が約20 kHz だからこそ、CD のサンプリング周波数は「その2倍+余裕」の 44.1 kHz に決められた。なぜ2倍必要なのかは、次のレッスン「サンプリングと量子化」で目撃できる。