色の表現 — 3つの数で1,677万色を操る
画面の色はすべて、赤・緑・青の光3本の「明るさの組」です。機械に都合のよい RGB と、人間の直感に寄り添う HSV。2つの「色の言葉」を行き来しながら、カラー画像の中身を分解して覗きます。
1. 光で混ぜる — 加法混色とRGB
ディスプレイの1画素をルーペで覗くと、赤・緑・青に光る小さな点(サブピクセル)が並んでいます。この3色の光の強さの組み合わせだけで、画面上のあらゆる色が作られます。光を重ねるほど明るくなる混ぜ方なので加法混色と呼びます。
各色 8bit なら値は 0〜255。下のデモでスライダーに触れると自動再生が止まり、自分で色を作れます。#FF7A00 のような 16進カラーコードは、R・G・B の値を16進数2桁ずつ並べただけのものです。
RGB混色実験 — 3本の光で色を作る
左=3色の光を重ねた様子(重なった部分ほど明るくなる=加法混色)。R+G=黄、G+B=シアン、R+B=マゼンタ、3つ全部で白。右=その3つの数が作る色と16進カラーコード。スライダーを動かすと自動再生が止まります。
表現できる色数 = 256 × 256 × 256 = 16,777,216 色
各チャンネル 8bit の場合。「トゥルーカラー」「24bitカラー」と呼ばれ、#RRGGBB はこの3つの数の16進表記
注意 — 絵の具とは逆(減法混色)
インクや絵の具は光を吸収するので、混ぜるほど暗くなります(減法混色)。プリンタが CMY(K) を使うのはこのため。画面で鮮やかだった緑が印刷するとくすむのは、2つの混色方式のずれが原因です。
2. 直感で選ぶ — HSV色空間
RGB は機械には都合がよいのですが、「もう少し鮮やかに」「少しだけ暗く」を RGB の3つの数でどう動かせばよいかは直感的ではありません。そこで同じ色を、色相(H: 何色っぽいか)・彩度(S: どれだけ鮮やかか)・明度(V: どれだけ明るいか)に分け直したのが HSV色空間です。
HSV色空間 — 色相リングと彩度・明度マップ
左の円環で色相 H を、中央の正方形で彩度 S(横)と明度 V(縦)を選びます。右は同じ色の RGB 表現と16進コード。H を回すだけで「色味」がまるごと変わる — この分け方が色選びに便利な理由です。
POINT — 色を「選ぶ」ならHSV
ペイントソフトのカラーピッカーは、ほぼ例外なくこの「円環+正方形」の形をしています。H で色味を決めてから S・V で調子を整える、という2段構えが人間の思考と一致するからです。RGB と HSV は計算で相互変換できる、同じ色の別の住所にすぎません。
3. カラー画像の中身 — チャンネル分解
カラー画像の実体は、R・G・B それぞれ1枚ずつ、計3枚のグレースケール画像(チャンネル)の束です。赤いリンゴは R チャンネルでだけ明るく写り、青いブルーベリーは B チャンネルでだけ明るく写ります。
チャンネル分解 — カラー1枚 = 白黒3枚
チェックを外したチャンネルは 0(真っ黒)として合成
コードで描いた果物の静物(リンゴ・オレンジ・ライム・ブルーベリー)。右の3枚が各チャンネルのグレースケール画像です。赤いリンゴは R の画像でだけ明るいことに注目。G を切るとライムが沈み、B を切るとブルーベリーがほぼ消えます。
4. 色を捨てて明るさを残す — グレースケール変換
カラーを白黒にするとき、単純に (R+G+B)÷3 と平均したくなります。しかし標準の変換は、緑を約6割も重くした加重平均です。
Y = 0.299 R + 0.587 G + 0.114 B
ITU-R BT.601 の輝度係数。緑の重みが約6割、青はわずか1割強
単純平均 vs 輝度加重 — どちらが自然に見える?
白い境界線の左=単純平均、右=輝度加重
下の帯は純色6色をそれぞれの方式でグレー化した値。単純平均では純赤・純緑・純青がすべて85で同じ明るさになってしまいますが、輝度加重なら緑150・青29と、目で見た明るさの違いをきちんと反映します。
純粋な緑 (0,255,0) と純粋な青 (0,0,255) を並べて見ると、緑の方がずっと明るく感じるはずです。人間の目の感度に合わせて重みを付けるのが「正しい」白黒化です。
一歩先へ — なぜ緑がそんなに重い?
網膜で色を感じる錐体細胞(L・M・S の3種)のうち、明るさの知覚を主に担う L と M の感度ピークは、どちらも緑〜黄の波長域にあります。青を担当する S 錐体は数も少なめ。だから緑は明るく、青は暗く感じるのです。ちなみに HDTV 規格(BT.709)の係数は 0.2126 / 0.7152 / 0.0722 と、さらに緑寄りです。
5. まとめ
- 画面の色は R・G・B の光の加法混色。8bit×3チャンネルで約1,677万色。
#RRGGBBはその16進表記。 - HSV は同じ色を「色味・鮮やかさ・明るさ」で言い直した座標系。色選び・色調整に向く。
- カラー画像の実体はグレースケール3枚(チャンネル)の束。画像処理の多くはチャンネル単位の操作。
- グレースケール化は輝度加重 Y = 0.299R + 0.587G + 0.114B。人間の目は緑に最も敏感。
一歩先へ — 色空間は用途で使い分ける
表示・保存は RGB、色選びは HSV、放送や JPEG 圧縮は輝度と色差に分ける YCbCr(人間は色の細部に鈍感なので色差成分を間引ける — 第12回で再登場)、色の差を測るなら Lab。「どの座標系で色を見るか」を選ぶこと自体が、画像処理の基本戦略です。