イーサネットとMACアドレス — 同じLANの中で届ける
家庭や会社の1つのLAN(ローカルネットワーク)の中で、機器どうしはどうやって相手を見分け、正確に届けているのか。鍵は機器ごとに焼き付けられたMACアドレスと、スイッチが「誰がどのポートにいるか」を学習するしくみです。フレームが届く様子とテーブルが埋まる様子を動かして理解します。
1. イーサネットフレームとMACアドレス
リンク層でやり取りされるひとかたまりのデータをフレームと呼びます。フレームの先頭には宛先MACと送信元MACが並び、末尾には誤りを見つけるためのFCSが付きます。スライダーで各フィールドを選んで、役割を確かめましょう。
フレームの中身 — どのフィールドが何をする?
MACアドレスは48ビット(16進で12桁)。前半はベンダを表すOUI、後半は製品ごとの個体番号で、原則として世界に1つだけ。選んだフィールドの説明が下に出ます。
MACアドレス = 48ビット = OUI(ベンダ 24bit) + 個体番号(24bit)
例:00:1B:44:11:3A:B7 / 先頭 00:1B:44 がメーカを示す割り当て番号
2. スイッチはどのポートに誰がいるか学習する
スイッチは、フレームの送信元MACを見て「このMACはこのポートから来た」とMACテーブルに記録します。宛先MACがテーブルに無ければ全ポートへばらまき(フラッディング)、有ればそのポートだけへ送る。使うほどテーブルが埋まり、むだな配信が消えていきます。送信元と宛先を選んで「フレーム送信」を押してみてください。
MAC学習 — テーブルが埋まると転送が正確になる
右がスイッチのMACテーブル。送信すると、まず送信元MACが学習されて行が光ります(黄色の枠)。宛先が未学習なら全ポートへフラッディング(宛先以外は破棄)、学習済みなら1ポートだけへ転送。同じ相手に2回目を送ると、むだ配信が消えるのが分かります。
POINT — 学習は「送信元」から、転送は「宛先」で
スイッチは通り過ぎるフレームの送信元MACを盗み見て場所を覚え、宛先MACで送り先を決める。だれも設定しなくても、通信が起きるだけで自動的に賢くなる——これが自己学習スイッチの要です。
3. ハブ と スイッチ — ばらまくか、絞るか
スイッチが普及する前はハブが使われていました。ハブは学習をせず、届いたフレームをつねに全ポートへコピーします。つまり全員に丸見えで、回線もむだ使い。スイッチは学習によって必要な相手にだけ送るので、速く・安全になりました。切り替えて見比べましょう。
ハブ(全員に配る) vs スイッチ(絞って配る)
A から C へ送るフレームを繰り返し流します。ハブだと B・D にも届いて「不要(破棄)」の札が付く。スイッチだと C にだけ届く。同じLANでも配り方でむだと安全性が大きく変わります。
4. 昔の共有メディア — CSMA/CD の衝突
さらに昔、1本のケーブルをみんなで共有していた時代(同軸イーサネット)には、2台が同時に送ると信号がぶつかって壊れる問題がありました。そこで各機器は「送る前に聞き耳を立て(キャリア検知)、ぶつかったら気づいて(衝突検出)、ランダムな時間だけ待って送り直す」——これがCSMA/CDです。
CSMA/CD — 衝突 → ジャム → バックオフ → 再送
A(緑)と B(青)がほぼ同時に送信 → 信号が中央でぶつかり衝突 → 全員がジャム信号で中止 → 別々のランダム時間(バックオフ)だけ待って再送。待ち時間が違うので、今度はぶつからずに順番に成功します。
注意 — MACアドレスは「LANの中」だけの住所
MACアドレスで届けられるのは同じLAN内だけ。離れたネットワークの相手へは、IPアドレスを頼りにルータを越えていきます。しかも1ホップ進むごとに宛先・送信元MACは書き換わる(IPは変わらない)。この住所の使い分けは次のレッスン「IPと経路制御」で扱います。
5. まとめ — 賢く届ける同一LAN
- MACアドレス:機器ごとの48ビットの物理住所。フレームの宛先・送信元に使う。
- スイッチの自己学習:送信元MACから場所を覚え、宛先MACで転送。未学習だけフラッディング。
- ハブ→スイッチ→全二重:ばらまきから絞り込みへ。衝突を前提としたCSMA/CDは、いまや歴史の役割に。
一歩先へ — 衝突が消えた現代のイーサネット
いまの有線LANは、スイッチと機器が専用線で1対1に結ばれ、送受信を同時にできる全二重が普通です。1本を奪い合わないので衝突そのものが起きず、CSMA/CDは使われません。一方でWi-Fiは電波を共有するため、衝突を「検出」できずあらかじめ避けるCSMA/CAという親戚のしくみを使っています。